『长篇故事・2ch』我和宅与公主殿下(二十四)
ぼくとオタとお姫様の物語 二夜
我与宅与公主殿下 二夜
7 名前:70 ◆DyYEhjFjFU sage 投稿日:04/10/07(木) 14:35:07
8日朝。
子供の頃からずっと通いつけの主治医のいる病院。
彼女は待合室の平べったい長椅子に座っている。
茶色で合成皮革の長椅子はところどころに穴があいていて
ガムテープで補強されている。
8日早上。
从小就一直有去的主治医生在的医院。
她坐在等候室那平坦的长椅上。
茶色的人造革长椅上到处都是破洞
用胶布填补着
何度となく見てきたこの茶色の長椅子に座っていると、ほんとうに気が滅入る。
たぶん病院の陰鬱なイメージが刷りこまれてるんだろう。
主治医は高齢で真っ白い髭が自慢の、子供に優しい爺さんだった。
安静に。これが処方箋だった。
坐在这熟悉的茶色长椅上,不知怎的我心情有些沉闷
大概医院的那种阴郁感也渗了进去吧
主治医生是个很喜欢孩子的上了年纪的爷爷
静养。这是处方。
ぼくはこの言葉を受けとるためにここに来る。安静に。
この病院で2種類以上の薬を処方されることはまずなかった。
だからぼくはこの爺さんが気に入っている。
飲んでもいいし、飲まなくてもいい。爺さんはそう言ってるみたいだった。
問診と触診が終わって、シャツに手を通してると爺さんはぼくにこう言った。
「今日はあのお嬢さんといっしょにいなさい。そばにいて看病してもらいなさい」
ぼくが笑いながら、なぜです? と訪ねると爺さんはあっさりこう言ってのけた。
若い男の風邪の特効薬は、若い女性だ。
静养,我就是为了听这两个字来到这里的。
这个医院不会开具两种以上的药
所以我特别中意这个爷爷。
喝也行,不喝也行。 爷爷仿佛在这么说
问诊和触诊结束,在我把手伸进衬衫时爷爷对我说
「今天就和那位小姐在一起吧。 请她在你身边照顾你」
我笑着问,为什么?爷爷很干脆地说
年轻男人的感冒特效药,是年轻女人。
からかうようにぼくに言って、それがよほど可笑しかったのか声に出して笑った。
ぼくは小さかった頃、この爺さんによく釣りに連れていってもらった。
ペンキの剥げた小型トラックの荷台に乗って、海岸を目指すのが好きだった。
弟は釣りに熱中してたけど、
ぼくは荷台に揺られる道中そのものが好きだった。
海岸線道路のコントラストの効いた強い日射し。蝉の声。
ぼくの幼少の頃は平穏そのもの。
どこにいっても安全がもれなく無料でついてくる。
就像是在捉弄我,也许是觉得那很好玩儿,笑出了声
小时候,这个爷爷经常带我去钓鱼
喜欢坐在掉了漆的小卡车后面,和爷爷前往海边
弟弟更沉迷于钓鱼
我则喜欢坐在车后摇晃的路程本身
海岸线上的强烈日照。禅鸣
我的童年就正如平静这个词本身。
不管到哪,安全都从未离开过我
大人たちがゆるく張った監視の目から外に出ることのない毎日。
でも姫様はそうじゃなかった。
風邪に倒れたとき、姫様はただ寝てるしかできなかったんじゃないだろうか。
ひょっとするとあのやしろのどこかに、ひっくり返って
ただじっと天井の絵を眺めているしかできなかったんじゃないだろうか。
あの晩、彼女は目を閉じ、欠落した絵を克明に復元した。
ちいさな唇から漏れた言葉が、闇の中で結晶化して、美しかった絵の細部を浮かびあがらせた。
从没有离开过大人们监视的目光
但公主不是那样
因感冒倒下的时候,公主能做的只是睡觉吧
也许是在神社的某处,翻着身
只是呆呆地盯着天花板上的画
那晚,她闭上眼睛,详细的复原了剥落的画
从那小小的唇漏出的言语,在黑暗中形成结晶,刻画出了过去那美丽的画的每一个细节
その記憶の正確さは、長いことあの絵だけを見て過ごした証拠だ。
小さな女の子が、あのカビ臭い絵をそっくり記憶してしまうほどの動機ってなんだ?
いや、動機なんてたぶんない。不自然すぎる。
そういう状態に追いこまれたんだ。
彼女はただうずくまって、熱が去るのをじっと待っていた。
目を開けば天井の絵が視界いっぱいに広がる。
そのとき弟は、彼女の側にいて額に浮いた汗を拭ってあげたんだろうか。
那记忆如此深刻,正是长期只仰望着那画度过的证据
年幼的女孩子,足以全部记下那发霉的画的动机是什么?
不,大概没有什么动机。这太过不自然
只是受那种情况所迫
她只能忍耐着痛苦,等待着烧退下去。
睁开眼睛,天花板的画在眼前展现
那时候弟弟,正在她身边为她擦去额头的汗吧。
8 名前:70 ◆DyYEhjFjFU sage 投稿日:04/10/07(木) 14:35:45
待合室に戻ると彼女の背中が見えた。
長椅子にちょこんと座ってバッグをかき回していた。
ふり返る彼女。
おかえり。よかったね、何事もなくて。
そう言った彼女の手には一枚のフロッピィが握られていた。
プラスチックの透明なケースといっしょに。
彼女は別に悪びれた様子もなく、ぼくの目に黒い四角の板をちらつかせた。
回到了等候室看到了她的背影
孤零零地坐在长椅上翻着包
她回头望过来
欢迎回来,太好了呢,没什么大碍
这么说着的她手里握着一张软盘
和透明的塑料盒子一起
她并没有什么慌乱的迹象,在我眼前展示着那黑色的四方形
頭の近くでくるくると人差し指を巻く仕草。
その指先には、彼女の細い髪が巻き取られていた。一本だけ。
彼女はフロッピィの磁気ディスクをガードする金属のシャッターをカチャと開いて
いま引き抜いたばかりの自分の髪をシャッターのスリットに通し
くるっとディスク本体に巻きつけた。
ライターを取りだしてさっと炙る。
ぼくは笑った。
そういうことだったのか。
用心深い姫様。
用食指在头发附近绕着圈
那指尖,正卷着她一根细细的头发。
她把保护软盘的磁盘口喀嚓打开
用刚拔下来的的头发穿过磁盘口的缝隙
缠绕在了磁盘上。
拿出打火机点燃
我笑了。
原来是这样么。
谨慎的公主。
フロッピィには封がほどこされてた。
あの目黒のホテルの暗がりの中では、とてもじゃないけど見えなかった。
いや、ほかのどこの場所でだって気づかなかった。
べつにヒロを疑ったわけじゃないんだよ、と彼女は言った。
このフロッピィは他にも数人の手を過ぎていくから。
フロッピィの封は脆い。慎重に扱わないとすぐにほどけて落ちる。
ブートなんてしようものなら誰かが中身を閲覧したとすぐにわかる。
软盘被加了封
在那个目黑的旅馆的黑暗中,完全看不见。
不,在其他地方也不会察觉到。
并不是在怀疑弘哦,她说
这个软盘已经经过了好几个人的手。
软盘的封很脆弱。不慎重保存马上就会脱落。
只要打开谁都能看到里面的内容。
ファイルの制作者は仲間すら信用していないってことか。
彼女は慎重にフロッピィを透明ケースに収めた。
今日はお家で寝てようね、と彼女は言った。
そのとき、ぼくはとうとう我慢ができなくなって彼女の手を握って座りこんだ。
どうしても訊いておきたかった。
訊いておかなくちゃいけないと思った。
也就是说文件的制作者连同伴也不相信么。
她慎重的收起软盘的透明盒子。
今天就在你家睡呢,她说
那时,我终于忍不住抓住她的手坐了下来。
怎么都忍不住想问。
觉得不问不行
いまはいい。彼女が目の前にいるから。
目の前にいれば安心感もある。
でも彼女のいない夜はどうだ?
ぼくはベッドの中でまんじりともできずに過ごすことになる。
きっとそうなる。そんなの絶対勘弁だ。
现在没关系。因为她在我眼前
在眼前的话也会安心。
但没有她的夜晚怎么办?
我会在床上连眼睛都无法合上不能入睡。
一定会那样。那样绝对不行。
10 名前:70 ◆DyYEhjFjFU sage 投稿日:04/10/07(木) 14:36:54
「なあ、恵子。そのフロッピィが君を危険にさらしたりすることってあるのかな?」
彼女はぼくが突然動いたために、驚いて椅子の上を滑って後退した。
ぼくと彼女の距離が開く。
そのせいでお互いの握り合った手が吊り橋のようにぴんと張って、垂れた。
彼女は首を振った。それから、絶対にそんなことはないと小声で言った。
「ありがとう。じゃあもうひとつだけ」
少し安心できた。
「呐,惠子。那软盘会使你陷入危险吗?」
因为我突然的动作,她吃惊的在椅子上后退着
我和她之间拉开了距离
互相握住的手就像吊桥一样拉长,垂落了下来
她摇着头。然后小声说绝对没有那种事
「谢谢。那最后一个问题」
稍微有点安心了。
彼女がぼくを気遣ってとっさに嘘を言ったのかもしれないけど
だとすればこれ以上訊いたって無駄だ。
でもぼくは安心することにした。そう信じることにした。
「あまり喋りたくないよ。ヒロ」
そうじゃないんだ。そういうことじゃない。ぼくはかぶりを振った。
「オタの、あ、えっと太田のアドレスってどうやって拾ったのかな」
彼女はごめんね勝手に見ちゃって、と言ってからこう続けた。
虽然这有可能是她注意到我的感受为了蒙混我说的谎话
不过如果是那样的话再问下去也没有意义。
但我安心了。我选择相信
「我不太想说哦。弘」
不是那样。不是指那件事。我摇着头
「宅的,啊,太田的邮件你是怎么找到的」
对不起呢,擅自看了,然后她继续说道。
ホテルに泊まってた夜。
二日とか三日前。もっと前?いつだったかよくわかんない。
画像がPCに映ったままになってて、真っ黒で、それを閉じると
ブラウザにメールボックスが表示されたままになってた。
明け方。ヒロはうとうとしていた。
彼女はPCに刺さったままのフロッピィには触れなかったと言った。
たぶんヒロがそっと返してくれると思ってた。
あの目黒の夜からそれは分かってた。
住在旅馆的那晚。
两天还是三天前。或者还要更早?忘记是什么时候了。
图片显示在电脑上,漆黑一片,把图片关上后
收件箱就那样显示在浏览器上
是黎明的时候。弘那时恍恍惚惚的。
她说软盘就那样插在电脑上没动。
说大概弘会悄悄地还回来
从在目黑的那个夜晚就知道了。
自分のたいした情報活動ぶりに情けなくなった。
ゴーリキーパークあたりに出演してたら
きっと一番最初にヴォルガの流れに浮かぶ死体になっただろうな。
いろいろ訊いてごめん。とぼくは彼女の髪に触れた。
コーヒーでも飲んでいこう。
会社にも連絡入れとかないと。
彼女はそのあと用事があると渋谷へ戻って行った。
对自己的情报保密工作感到难为情。
要是出演高尔基公园
我肯定会成为最早漂浮在伏尔加河上的尸体吧
抱歉问了你这么多。我抚摸着她的头发
去喝杯咖啡吧。
公司那边也要说一声
在那之后她说有些事回了涉谷。
彼女はいったいどこで荷物を取り替え、着替えをし、また綺麗になって戻ってくるんだろう。
毎日必ず戻ってゆく渋谷の街に何があるだろう。
そんな疑問がいつも浮かんでは消える。
たいして重要じゃないことは分かってる。
質問することは禁じられた。まあ、いいや。
女の子の言うことはいつだって正しい。正しくないときには喋らなくなる。
她每天到底在哪里换行李,换衣服,再次漂亮的回来呢
每天必定要回去的涉谷街道里到底有些什么呢
脑子里一直浮现着那样的疑问
我知道那不重要
但是被禁止提问了。也好
女孩子说的话不管什么时候都是正确的。不正确的话便会沉默
病院のまわりには、いまでも畑がちらほら残っている。
乗り捨てられた赤いバン。
そいつが病院の正面の畑の角に鎮座していて
なぜこんなところで廃棄されたままになっているのか理由がわからない。
ガラスは全部取り除かれ、いまでは雑草の苗床になってて
医院附近,现在也还稀稀落落的留有农田
被开过来丢掉的大货车。
端坐在医院正面的农田角落里
不知道为什么被遗弃在了这种地方
玻璃全部都被拆掉了,现在已经成了杂草的苗床
もしかすると春には風変わりなオブジェみたく見えるのかもしれない。
タンポポとかバターカップ。その他、名も知らない小さな花。
姫様の記憶もいつかこうなるときが来るんだろうか。
色あせてういういしくなるような。
也许到了春天看上去会像是与众不同的插花题材
蒲公英和金凤花。与其他不知名的小花。
公主的记忆中何时也会迎来这种时候吗。
已经褪色的(纯真无邪)天真烂漫的回忆。
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今日書いてるときに流れていた曲
シャルロットマーティン/Charlotte Martin 「on your shore」
キーン/Keane 「hopes and fears」
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今天写时放的曲子
Charlotte Martin 「on your shore」
Keane 「hopes and fears」
大家新年快乐 ^^(✪~✪)^^
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辛苦了,新年快乐
A也辛苦啦✪ω✪
还没完结啊。。
新年快乐
感觉这种莫名文艺翻起来好辛苦的呢…
咳咳。。主要还是我能力不足
吐槽一下,我的重感冒,感觉像被他传染似的,不过两天就好了,我也有特效药呢(笑
可恶,我也感冒了【阿嚏
[doge]
新年快乐!
淡淡的忧伤。
感谢翻译。最近指望着这个活了。
啊,忘说了,新年快乐
辛苦了!
新快!
趁著聽報告時默默沉浸在澀谷的那幾天當中,到現在也差不多要下課了 雖然說有些彆扭,對我來說是蠻沉穩而安心的筆調,微鬱的空氣也能隱約感受,辛苦翻譯了
期待後續,就算是終要轉瞬消逝的泡沫,也比一直徬徨於路途好多了呢